未完成人一家
万里子は泣きながら千円札を大事そうに手にやると、自分の部屋に入り、静かに泣いた。
(酷い・・・ あんな男・・・ 香代子、可哀相に・・・ )
ワープロのキーボードを叩く。
『そこで母は、娘の上に被さるようにして、身代わりになって殴られた。
いつも、こうして娘を守ってきたのだ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
娘は回復すると、母に笑顔を向けた。
『お母さん、助けてくれてありがとう。 』と・・・』
それは官能小説ではなく、万里子が自分のことを書いた物語だった。