未完成人一家

「お母さん、ずっと帰ってないの?」

たまにしか帰らない香代子には事情がよくわからない。

「知らないよっ あんな女。

気持ち悪い! お父さんもウザいけど、お母さんのしてることは最低だよ。

あたしもう、この家にいたくないよ・・・」

雅也の腕にもたれ掛かると、真奈美の眼から大粒の涙がこぼれる。

『あーもう、泣かないでよ。あたしも母に話してみるよ。』

いつもこんなだ。 姉はすっかり子供返りしているようだ。

雅也の優しさに触れて、安心してるだろう。

香代子はそんな真奈美をいつも羨ましく思う。



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