未完成人一家

万里子の書いてきた小説は、大抵がミステリーだ。

子供の頃から大好きで、片っ端から読んでいた。

募集記事を見付けては投稿してきたが、一つの小さな賞を取ったっきり、一向に芽が出ない。

今は洋書の翻訳の仕事が少しあるくらいだ。

最近、小説仲間がデビューした。

たいした表現力もなく、文章も稚拙な彼女に、万里子は書き方を教えてやる立場だった。


彼女は官能小説家として一躍、スターになったのだ。


『官能かぁ・・・』


万里子は一人、呟いた。


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