真愛-シンアイ-

夜になるとスーツやドレスを身に纏った人達の出入りが激しくなる。

皆夢を買いに来るんだ。

私はタバコに火を点けて煙を吐いた。

大人びた容姿のおかげで堂々とタバコを吸っていても怪しまれた事など一度もない。

「ねぇねぇ君いつもいるよね?」
私に話し掛けてくる男たちも少なくない。
私はいつもの如く無視を決め込む。

「ねえってば!」

大抵の男は無視をしていれば諦めて立ち去っていく。

しかしこの男は違った。

「ちょ-っと可愛い顔してるからって調子こいてんじゃねぇぞ!」
男は手を振り上げた。

やばい!!
私は咄嗟に持っていたタバコを男の腕に押し付け走った。

「うあぁ…あつい!」

遠くで男の悲痛な声が聞こえる。
< 2 / 17 >

この作品をシェア

pagetop