【連作】そらにかなでし〜平安朝禁断恋草紙⑤〜
「甘きこは紅きにくゆる紅葉かや……」

(この甘い香りは、赤く燃えた紅葉を焚いている香りでしょうか)

二の君がこのようにお尋ねになりますと、

「……月の残りの香ににほひける」

(若君方がいらっしゃるまでは、香月様のおそばにおりましたから、それで、移り香がするのでしょう)

と、この女房はこのような返歌を申しまして、

「若君、こちらへ……」

と、静かにお招きいたします。
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