【連作】そらにかなでし〜平安朝禁断恋草紙⑤〜
このように、深々と頭を垂れるうら若い女房の、一の君にはたいそう懐かしい声で言うのを、けれども、この方の姿には、覚えがなくて、

「なんと、不思議と懐かしいお声でいらっしゃる……」

とおっしゃいますのを、

「一の君様はお小さくていらっしゃいましたから、私のことなどは、もはやお忘れでしょう。私など、とるにたらぬ身分の者ですから、お気にかけていただくほどではございませぬ」
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