【連作】そらにかなでし〜平安朝禁断恋草紙⑤〜
このように申しますと、この女房は、若君方の先立ちをいたしまして、西の対の廊をしずしずと渡って参ります。

「こちらへ……」

と、若君方を誘われました、こちらの対屋(たいのや)の主たる方のご居間には、浅く香る菊の香がただよいまして、時の流れも他よりもなにか静かなものに感じられるのでした。
< 7 / 30 >

この作品をシェア

pagetop