†Devil Kiss†


「あの人は、ここの村の村長の息子なんです」


「村長の息子・・・?」



さっきのはつらつとした姿とは一変。



急に静かになってしまった。



「あの人はこの村一番の有名人でお父様やお母様が留守の間は好き勝手する、ただの我が儘なんです」


「彼のお父様の村長とお母様の奥様はろくに仕事もせず、二人で海外へ旅行へ行ったりする始末」



"まぁ、小さいですし、のんびりな村ですから、大事件も起きないんですけどね"と小さく笑って、ローズは言った。




知ってるさ。



ずっと見てきたんだからな。



昼間はローズを口説いて、紳士気取りをしているが夜は毎日違う女をとっかえひっかえ・・・



まぁ、俺の世界ではそんなことは大したことではない。



誰が誰と何をしようが構いやしない。



だが、こっちの世界に来て

心をもらって

ローズと話してよく分かったような気がする。



ローズの怒る気持ちが・・・。




「あたしは早くに父を亡くしました。そのせいで、母は大変な苦労をしてあたし達を育ててくれました・・・それなのに・・・」



一粒───────



「それなのに、一生懸命働いている人を見下し親の金で毎日遊びほうけているあの人が許せない!・・・っ・・」



また一粒と、大粒の涙を流しながらローズはその場に座ってしまった。



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