ストレイ・ハーツ〜夢みる王子のねがいごと〜
日が沈みかけてきた頃、漸く草と木々が僅かに開けた場所に出ることができた。
そこにあったのは──
「…湖…」
「へー、きれーだねぇ。魚ぐらいいるかなぁ」
「家は…さすがにこんな場所じゃないか」
草むらを抜けた目の前に広がっていたのは、大きな湖だった。
それぞれにあたりを見回しながら情報を物色する。
休憩をとりながらではあるがほぼ一日歩き通しだったせいで、皆くたくただ。
おそらくこの中じゃ一番レオが体力のある方だとは思うけれど、流石のレオも休める場所に辿り着けたことにほっと安堵した。
「辺りの様子も伺えるし、水が確保できるのは貴重だ。今日はここで、休もう」
いつの間にかアオが指示をするようになっていたが、誰ひとりそれに反論することなく一様にどっと肩を撫で下ろす。
「あとどのくらいこの森が続くのかはわからないが、長居は避けたい。なるべくはやくこの森を抜ける為にも、さっさと休んで明日ははやめに発とう」
アオの指示に皆覇気無く頷き、湖のほとりで一番大きな木の下に荷物をまとめた。
今回は今までと違って屋根も壁も無い。
なるべく固まっていた方が良い。
「火は、あった方が良いですよね…」
「この森に獣が居るかはしらんが、無いよりはいいいだろう」
ソラの質問にアオが神妙な顔で答える。
うららが不安そうに見つめた視線の先の森は、無言で応えた。
アオが夕飯の支度をしている間に他のメンバーで焚き木を集めに湖周辺の草むらに散らばっていた時。
また、あの気配がした。
カサリと風に草がさざなむ音に紛れて微かに聞こえる物音。
レオは意識しないように視界の隅であたりの様子を伺いながら、視線を巡らせる。
数メートル離れた草むらの中。
ナニかが、居る。
レオは拾い集めた枝を片手で抱えなおし、視線は草むらから外さずに身を屈めた。
足元に転がっていた一際太く手頃な木の棒をそろりと拾い上げる。
それからゆっくりと慎重に、音のする方へと向かった。