ストレイ・ハーツ〜夢みる王子のねがいごと〜
全員が起き湖を発つ準備をしていると、森の出口まで一緒に行っていいか、とライオンが遠慮がちに尋ねてきた。
真っ先に口を開いたのはレオだった。
「言っとくけど、オレはあいつらみたいにお前の欲しいもんなんてやれねぇからな。あいつらが何をしたのかは知らねぇけど、オレはオレの事が一番大事だし、お前に構ってる暇はねぇ」
『いいんだ、ボクはこの森から出るなんてとても出来ないし、会えただけで十分嬉しかった。だからせめて森の出口まで、送らせてほしい。この世界はいま、とても不安定だから』
そうして森の出口まで、ライオンも一緒に行くことになった。
かかしやブリキのきこりと違い、ライオンは願いを口にしたりレオに何かを求めているわけではないようだたった。
「あなたは…願い事は、ないの?」
隣りを歩いていたライオンはうららの言葉に耳をぴくりと震わせ、それからゆっくりと視線を向ける。
『もちろん、あるよ。だけどボクは、それを口にするのすらこわいんだ』
「……こわい…?」
『叶わなかったとき、こぼれてしまったとき、うしなってしまったとき…ボクはその哀しみに、きっと耐えられない』
か細くそう落としたライオンの瞳には、諦めの色すら滲んでいるように見えた。