ストレイ・ハーツ〜夢みる王子のねがいごと〜


「な、にを…言ってるの…?」


――わたしを…この世界の〝ドロシー〟に…? それは、どういう意味…?


東の魔女が語るその言葉は、まるで現実味の無い夢物語のようだった。
なのにまるで毒のようにじわりと入り込んできて、意識を奪う。


「夢見る王子は、いったいダレの味方なのかしら?」


その声がはっきりと耳元で囁かれたと思ったら、いつの間にか魔女はうららのすぐ傍まで来ていた。
うららのすぐ目の前まで。


「ずっとひとりぼっちだったものね? うらら。現実の世界に戻っていったい何があるというの? ここに居ればいいじゃない。アタシたちはそれを望んでいるわ。ねぇ、うらら。力さえあれば、みーんな好きなようにできる。もう、寂しい思いなんてしなくて済むのよ」


──やめて…!


思わず耳を塞ぐのに、魔女の言葉はあらゆる隙間からうららの身体へ侵食してくる。抗えない。

振り解けない。


「アタシ達が…アタシこそがあなたの味方。あなたの孤独を、ダレよりもよく解ってる」


――やめて、聞きたくない…知りたくない。思い出したくない…!

だって、〝ソコ〟には──


「あなたは願いを叶える為に、あの銀の靴を履いた。たったひとつの願いごとを願った。──なにを? あなたが何よりも強く、願ったものは? 思い出して、うらら…ソコに銀の靴は在る」

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