ストレイ・ハーツ〜夢みる王子のねがいごと〜
ライオンは語るのを止めない。
いつからこのライオンはこんな風に、顔を上げて前を向いていたのだろう。
いつも影から覗くように、もしくは俯きがちに相手の顔色を伺うばかりで。
頼りなく話すばかりだったのに。
いつの間にかしっかりレオを見て話し、自分の意思で走り出していた。
『だけど今は、ちがう。レオがいるからかな、不思議ともうこわいとは思わないんだ。それよりもボクは、うららが泣くほうがイヤなんだ。レオ、こんな…こんなボクでも、走り出せたから…ちゃんと、言葉にできたら、うららは笑ってくれるかな』
スピードを緩めること無く走り続けるライオンのその声は、この状況に似つかわしくないほど落ち着いていて、驚くほど静かな声音だった。
だけどしっかりとした口調で、ただ前だけを見据えていた。
すぐ目の前には蠢く闇が迫っている。
だけど不思議ともう、こわいとは思わなかった。
『ボクはずっと、勇気が欲しかった。ダレにも負けないような、ボクだけの勇気が──』