ストレイ・ハーツ〜夢みる王子のねがいごと〜
「な、なに…?!」
何かが地面に落ちるような、倒れこむような音が悲鳴と共に聞こえ、そして追って獣の唸り声があたりに響く。
次第に増す雨音に掻き消されることなくそれは響き渡った。
目を開けると頭上高くに居たはずの魔女の姿が地面へと倒れこみ、そのすぐ上に金色の大きな獣が居た。
水を吸ったその毛色は衰えることなく、まるで光を纏っているかのように神々しく凛々しい。
喉元から発せられる唸り声は絶えることなく、その大きな前足で魔女を押さえつけていた。
「…ライオン…?」
「──レオの、住人か…?」
リオとアオは呆然としたまま、その様子をただ見守る。
今までレオとうららにしかその姿は見えてなかったはず。
どうしてふたりの目にも映るのかはわからなかった。
レオとうららの姿は、見当たらない。
「……ッ、なにすんのよ…! アンタ、どうやってアタシの魔法から抜け出たわけ…?!どきなさいよ! アンタがアタシに勝てるわけないでしょう…?!」
東の魔女が怒りで声を張り上げるが、ライオンは退く気配を見せない。
「いい加減に…!」
再度叫んだ魔女の顔つきが、何かに気付いたように突如強張る。
その視線の先にいるのは金色のライオンだけ。
「アンタ、まさか……っ」
そしてライオンが、声を発した。