ストレイ・ハーツ〜夢みる王子のねがいごと〜
まっすぐオズの目を見て、願いを差し出す。
その迫力に気圧されそう。
だけど、やっとここまで来たんだ。
それからオズのその大きな目が数度瞬き、じっとうららを見つめた後、口を開いた。
『それはお主の本当の願いではない。そして何より我がお主の願いを叶える理由がない』
「そ、そんな…! あなたはどんな願いも叶えてくれる偉大な魔法使いなんでしょう…?!」
『いかにも。しかし、我の魔法は何よりこのエメラルドの都の為にあるもの。お主が願いを叶えて欲しいのなら、我の頼みをきいてもらわねばならない。この世界では望むものを手に入れるとき、等しく皆、代償を支払わねばならないのだから。我が願いを叶える為の、代償だ』
「代償…」
願いを叶える為の代償は、記憶だったはずではないのか。
それともこの世界で叶う願いと、オズが叶える願いとは別のものなのだろうか。
なんだか頭が混乱する。
ともかくただ、今、願いが叶わないことだけは…まだ帰れないということだけは、漠然と理解できた。
「その、代償というのは…?」
部屋に入ってきた時とは打って変わったように力ない声で尋ねると、オズはきっぱりとそれを口にした。
『西の邪悪な魔女を倒しなさい。そしてその証明を、我の前に』