ストレイ・ハーツ〜夢みる王子のねがいごと〜
重たい瞼を押し上げると、すぐ目の前に男の子の顔があった。
「──よかった、うらら…! なかなか目を覚まさないから、すごく、心配した…!」
言葉と共にそっと自分の顔に添えられた、あたたかくて大きな手の平。
あまりにも自然なその動作に、うららには戸惑う間もなかった。
ただ黙ってその動作を受け入れる。
頭がボーっとして、思考がまとまらない。
そんなうららを置いて、目の前の男の子は続ける。
「どこか怪我はない?」
「……え…っと」
「はい、メガネ。割れてなくてよかった。うららには大事なものだもんね」
「…え、あ、の……」
「どうしたの? 気分わるい?」
うららは条件反射のように差し出されたメガネを受け取りそれをのろのろとかけながらも、言葉は上手く形にならず零れるだけで。
その反応の悪さに目の前の綺麗な顔がずい、と近付く。
とても整った、だけど少し幼さの残る甘い顔立ち。
名前を呼ぶその声すら、甘い響きを孕んでいる気がした。
少し戸惑いながら、うららは漸くそれを言葉にした。
「あなた、だれ…?」