原色ヤンキーにメガネ
「…………」

(どうしよう。アレ……深いプールだったら?)

背中を押されて歩き出してしまったものの、一歩進むたびに不安が大きくなっていく。

ウォータースライダーの下のプールに目をやると、高校生ぐらいの女の子がいて、どうやら水位は胸よりも下に見える。

『ねぇ、知ってる?人間って膝下位の水で溺れ死んじゃったりするんだってね?』と昔、誰かに聞いたセリフがこんな時にだけ鮮明に蘇ってきて良子の不安をさらにあおった。

出来れば玉置にこれ以上弱みは見せたくない。

幸か不幸か玉置は良子がカナヅチであった事をすっかり忘れている様子だし。

ここまできたのだから、なんとか誤魔化したいのが良子の本音だ。

これ以上弱味見せたら、また何年後かに『就職試験カンニングさせろ』とか言われそうな気もする。

(いや……泳げないなんて言ったら未来永劫脅されるかもしれないじゃん!!)

不安とは別の感情に一瞬ブルッと体が震えた。


(考えろ!考えるんだ、良子!!)

良子は頭をブンブンと振った。

つまりは──
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