月と太陽の事件簿8/微熱混じりの推理
現場を見たあたしもそれは感じた。

でもその前に。

「達郎は西本がどういう政治家だったか知ってる?」

達郎はうなずいた。

「バリバリの武闘派で有名だったな」

達郎の言う通りだった。

西本はインタビューや討論番組で過激な発言を連発していた。

日本は過去の歴史を忘れ本気で核武装すべきだと論じ、世間から袋叩きにあったこともある。

「プライベートでもあのまんまの人間だったらしいわよ」

両親はすでに他界。

7年前に死に別れた前妻との間に子供はなく、親子ほど年齢の離れた現夫人に対しては超のつくほど亭主関白であったらしい。

「秘書や事務所の人間に対しても高圧的な態度で大声で怒鳴りつけるなんてことはしょっちゅうだったそうよ」

「そんな人間が自殺なんかするわけないと?」

察しがいい。微熱があるとはいえ、頭の回転は悪くなさそうだ。

「捜査二課も同じような見解ね」

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