月と太陽の事件簿8/微熱混じりの推理
達郎は腕組みをした。
「春代や山室はなんて言ってる」

「遺書にもあるように、自らの脱税問題にけじめをつけたんだろうと言ってるわ」

「遺書?」

そう言ってから達郎は再び唇を尖らせた。

「遺書が見つかったのか?」

「ええ」

あたしはうなずいた。

その遺書の存在こそが、あたしたち捜査陣の頭を悩ませているのだった。

「その遺書ってどんな内容だ」

あたしは手帳を開いて、そこに書き付けておいた文章を読み上げた。

『この度の件に関しては全ての責任は私にあります。よって自らの命で償いたいと思います』

「短く平坦な文章だな」

中身がないとも言えるー達郎はそう付け加えた。

「で、実際のとこはどうなんだ」

「どうって?」

「実際に西本は脱税をしていたのか?」

ああ、そのことね。

「脱税に関しては山室が全面的に認めたわ」

脱税は西本自身の指示で行われていたそうだ。

「えらくあっさり認めたもんだな」

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