月と太陽の事件簿8/微熱混じりの推理
「この際だから真相を包み隠さず話そうと思ったみたい」

「ふぅん」

達郎は三たび唇を尖らせた。

「じゃあ、現場の話を聞かせてくれないか」

了解、とあたしは手帳をめくった。

「現場が別荘だっていうのは説明したわね」

西本はそのリビングのソファで死んでいた。

ソファ前のテーブルには広げられた遺書と万年筆にウイスキーとグラスが置かれていた。

テーブルの上で遺書を書いた後、ウイスキーと一緒に青酸カリをあおったとみられる。

「西本はバスローブ姿だったわ」

「バスローブ?」

達郎は眉を寄せた。

「別荘のシャワーを使った形跡はあったのか?」

「あったようだけど、髪の毛なんかは採集できなかったみたい」

「別荘は普段から使われてたのか」

「春代いわく今年になってからは一度も利用してなかったそうよ」

「シャワーを使ったのに体毛が採集できなかったのは妙だな」

そう言って達郎は麦茶に口をつけた。

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