月と太陽の事件簿８／微熱混じりの推理
梅谷さんはあたしが生まれる前から月見家にいるお手伝いさんだ。

「お久し振りです」

そう言って梅谷さんは深々と頭を下げた。

「お久し振りです」

あたしも笑顔で会釈を返す。

そして梅谷さんの案内で玄関に入った。

そこであたしを待っていたのは麻砂お婆ちゃんだった。

母方の祖母にあたる麻砂お婆ちゃんは今年で80歳になる。

髪には白いものがだいぶ増えたけど、肌はきれいだし背筋もピンとしている。

とても姿勢がいいから着物姿も映える。

あたしは麻砂お婆ちゃんほど着物が似合う人はいないと思っている。

「お久し振りです、お婆ちゃん」

あたしは深々と頭を下げて挨拶をした。

するとそれまで凜とした表情を崩さなかったお婆ちゃんの表情が緩んだ。

「久しぶりね、麗実」

あたしの大好きな、お婆ちゃんの笑顔だった。

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