月と太陽の事件簿８／微熱混じりの推理
「選挙事務所の人間も、西本がＢ県に向かってることは知らなかったのか？」

「そうみたい」

西本の行動は完全に単独行動だった。

「西本が家を出たのは午後9時過ぎ。自家用車を運転して、そのまま行方不明になったわけ」

「西本が車で出てくところを確認した人間はいるのか」

「西本と付き合いのある会社役員が通りかかってね、車を見送った春代に挨拶をしているわ」

その会社役員は、車は確かに西本のものだったと証言した。

「じゃあ西本は車で別荘に向かって、そこで青酸カリを飲んで死んだということか」

「それだと死亡推定時刻にズレがでるけどね」

「夏に放置されてれば、2･3時間は仕方ないだろう」

「まぁね」

あたしは肩をすくめた。

「遺書は確かに西本が書いたものなのか」

「春代や山室をはじめとする関係者はみな西本の字だと言ってるわ」

簡易的な筆跡鑑定も行なわれたが、西本自身が書いたものらしいという結果が出た。

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