月と太陽の事件簿8/微熱混じりの推理
どこぞの老舗旅館かと見まがうほどの長く広い廊下を、お婆ちゃんと連れ立って歩いた。

「麗実、お仕事の方はどうなの?」

司法一家を数十年に渡って支えてきたお婆ちゃんが警察官の仕事を理解してないはずがない。

でもやはり、女のあたしが捜査一課の刑事をしているのが心配なのだろう。

「やりがいはあるわよ」

あたしは努めて明るく振る舞った。

「あなたがそう言ってくれてるならいいんですけどねぇ…」

お婆ちゃんはちらりとあたしを見てから

「私は達郎が麗実に迷惑かけてないか心配で心配で…」

ああ、そういう事ね。

あたしのお目付け役という立場を思ってくれてたのか。

お婆ちゃんは達郎の民間協力員という立場を誤解しているフシがある。

一般人の達郎が捜査現場にしゃしゃり出て、あれこれ口出ししてると思い込んでるらしい。

実際はそんなことないのだが、達郎のマイペースな性格を知るお婆ちゃんにしてみれば気になって仕方ないのだろう。

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