月と太陽の事件簿8/微熱混じりの推理
「相手は…犯人は、西本とやり取りをする中で隙を見てウイスキーに青酸カリを入れた」

ウイスキーを飲んだ西本はそのまま絶命。

相手を死に追いやるつもりが、見事に逆襲されたってわけか。

「でもちょっと待って」

あたしは浮かんだ疑問を口にした。

「それだと春代はどうなるの?」

3日前の夜、春代は車で出かける西本を見送っているのだ。

「犯人に脅されて、アリバイ作りに協力させられたんだろう」

達郎は指先でこめかみを叩いた。

己の考えを確かめるような仕草に見えた。

「目の前で旦那が殺された春代は、恐怖で犯人に従うしかなかったはずだ」

「じゃあ春代が見送った車は…」

「当然、西本が運転していたものではない」

「犯人が運転していたわけね」

「車には、西本の死体も乗っていたはずだ」

つまり犯人は春代に見張りをさせて、部屋から西本の死体を運び出し、車に乗せた。

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