月と太陽の事件簿8/微熱混じりの推理
「おかしいと思ったのよね」

嘔吐物で遺体が汚れてるわりには、別荘のソファや床は綺麗だった。

奇跡でもなんでもない。

西本の死んだ場所が別荘でなかっただけだ。

でも、肝心なことがまだ分かってない。

「いったい誰が西本を殺したのかしら」

「おそらく西本に一番近かった男…秘書の山室だろうな。別荘に関して言葉を濁していたあたりがなんかひっかかる」

「でも山室は脱税を認めているのよ?」

西本の指示とはいえ、脱税には己も関わっていたのだ。

ここまできたら罪はすべて隠し通すものではないのか。

「殺人と脱税、どっちが罪重いんだ?」

…。

「脱税を隠れ蓑にして、捜査の目をごまかそうとしてたかもな」

…うーん、達郎の意見が正論かも…。

「3日前の夜、山室は西本を送った後はすぐ帰宅したって証言したんだよな。だったらその夜の山室のアリバイを洗ってみたらどうだ」

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