月と太陽の事件簿8/微熱混じりの推理
「それで西本を殺そうとしたわけか?」

あたしはうなずいた。

「親類の経営する町工場から、青酸カリを盗み出してまでね」

春代はその機会を虎視眈々と狙っていた。

そしてあの日の夜、ついにその機会は訪れた。

春代は素知らぬ顔をして西本に青酸カリ入りのウイスキーを飲ませ殺害。

春代の想いを察した山室は事件の隠蔽を図った。

「やれやれ、気になってはいたんだ」

達郎は肩をすくめた。

「事件の夜、車を見送る春代と会社役員が挨拶をかわしたと言っただろ」

「そうよ」

「脅されていたとはいえなぜ春代はその場で助けを求めなかったのか」

「確かにそうね」

春代は車を運転していたのが山室だと悟られまいと咄嗟に嘘をついた。

結果、その嘘が細工となって西本が失踪・逃亡のあげく自殺したという話ができあがった。

しかしその後の訊き込みで、B県の選挙事務所に西本が訪問する旨の連絡を入れたのが山室だったことが判明。

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