月と太陽の事件簿8/微熱混じりの推理
お婆ちゃんが着物の裾をはためかせて走り出した。

「お、お婆ちゃん!?」

正確にはすり足の早歩きだったけど、80歳とは思えないスピードで、あたしはついていくだけで精一杯だった。

これまた長い廊下を渡り書斎へたどり着く。

「達郎!」

お婆ちゃんはドアを開けるなり、どこから出すのかと思えたほど大きな怒鳴り声をあげた。

「どうしたんですか、お婆ちゃん」

本棚の前で分厚いハードから顔をあげた達郎に、お婆ちゃんはさらに怒声を浴びせた。

「どうしたもこうしたもありません!誰が起きていいと言いましたか!?」

白のパジャマ姿で首にアイスノンを巻いたその姿は確かに病人だ。

しかし当の達郎は悪びれた様子もなく言った。

「すみません。寝てばかりで退屈だったもので」

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