きみとベッドで【完結】
俺の知らないきみがたくさんいるから、
なにがきみを傷つけるのか
俺にはわからない。
「なんで泣く……」
指でぬぐっても、ぬぐっても。
シキの涙はあとからあとから流れ出てきて。
仕方がないから彼女をくるりとこちらに向かせ、
その顔を俺の胸に引きよせた。
「泣くなよ、シキ」
小さな頭をそっとなでると、
弱々しく、シキが抱きついてきた。
胸元がすぐにじわりと湿っていく。
黒猫は、声を殺して泣くものらしい。
きみの泣く理由がわからないまま、
俺はきみをなぐさめた。
きみの心がこの時たしかに、垣間見えた。
ひどい話かもしれないが、
それが俺には少し、うれしかったんだ。