きみとベッドで【完結】
「……なーんだ。本当に聴いてないんですね」
浅倉はどこかほっとしたように
そして少し残念そうにそう呟いて、立ち上がった。
「安藤先生。……今日用事ができたっていうのは、嘘ですか?」
ギクリとした。
浅倉の澄んだ目が、俺の内心を見透かしている気がして。
「……なんで嘘つくんだよ。デートだよ、デート」
「デート? 先生が?」
「そう。他の奴らには言うなよ」
換気扇に吸い込まれていく煙りを、目で追いながら言った。
浅倉の目を見返すことはできなかった。
頼むからもうこれ以上、
俺の中に入ってこようとしないでくれ。
そう心で念じていた。
「……嘘ですね」
「え?」
「先生に恋人なんて、いないでしょう」
「なんだ。俺に女はいないように見えるか?」