きみとベッドで【完結】
『お久しぶりね。元気でいらした?』
少し低い、女の声。
あたしはこの人の声が嫌いだ。
あたしを蔑んでいる表情が、声だけで明確に伝わってくる。
「……はい。こちらは変わりなく」
『そう。もうすぐ夏休みでしょう。あなたどうされるのかしら』
夏休み。
それはあたしには、あってないようなもの。
休みなんてあっても浮かれることはない。
むしろ面倒が増えるだけ。
あそこに、行かなければならないのなら。
『こちらに戻ってこられるの? あちらのお家にお邪魔されるのも構わないのよ』
「いえ……向こうには」
『あちらからもぜひにとお電話いただいたの。オルハさんたら、ちっともあちらのご両親に連絡されてないのね』
ふざけないでほしい。
できるわけがないと、わからないのだろうか。