きみとベッドで【完結】
先生は新聞を閉じて、煙草も灰皿に押し付けた。
「どこか、行きたいとこあるか?」
「……え?」
「休み中に、どっか行くか? 旅行でも」
旅行。
先生と。
旅行なんて、修学旅行くらいしか経験がない。
家族でとか、友人ととか。
それは自分とは無縁のものだと思ってた。
先生と2人で旅行。
それはきっとどこへ向かうにしても、
とてもとても、幸せだろう。
でも、いけない。
幸せすぎてあたしはきっと
死んでしまう。
「行きたいところなんて、ないよ」
「本当に? ちょっとくらい遠くてもいいんだぞ」
大人の男の手で、先生があたしの頭を撫でる。
まるで愛猫にするように。