きみとベッドで【完結】
着替えようとブレザーを脱いだ時、
玄関のドアが開く音がした。
「幹生?」
時計を見る。
まだ5分と経っていない。
「財布でも忘れた? 意外とぬけて……」
シャツのボタンを外しながら振り返り、
直後あたしの体は凍りついた。
部屋に上がって、あたしのすぐ後ろに立っていたのは、
スーツ姿の中年の男。
白髪まじりの頭、肩のない痩せぎすの体。
眼鏡の奥で光る、陰気な瞳。
あたしはこの男を、よく知っていた。