きみとベッドで【完結】
「お父さ……」
にたりと男が笑った。
口が横に裂けたような無気味な笑み。
久しぶりに見るこの笑みに、全身に鳥肌が立つ。
どうして、ここに……
「不用心だなオルハ。鍵が開いていたぞ?
ひとり暮らしをはじめるなら、戸締りはしっかりしないといけないな」
ねっとりと、
耳の中をはいずるような質の声。
体が震えだす。
「なかなかいい部屋じゃないか。よかったな、オルハ。母さんに感謝しろよ」
この男に名前を呼ばれるたび、
自分が汚されていく気がした。
だからあたしは
あたしの名前が大嫌いだ。
名取織羽という名前は
汚れ、呪われている。