きみとベッドで【完結】
「寮でおとなしくしてればいいものを。卑しいおまえに、金持ち学校は肌に合わなかったか? ん?」
男が一歩、あたしに近づく。
あたしはそのぶん、一歩退く。
「でもなぁ、オルハ。ひとり暮らしなんぞして、俺から本気で逃げられると思ったのか?」
嘲笑には怒りより、恐怖しか生まれない。
男なんてみんな同じ、どうしようもない生き物で、
それは時に愛しく思えることもあったけれど。
でも、この男はちがう。
この男だけは別。
この男の存在はあたしにとってどこまでも
恐怖でしかないんだ。
「こ、来ないで……」
「来ないで? 父親に向かって、ずいぶんじゃないか」
「許して……来ないで……っ」
「逃げることはないだろう。かわいい娘がひとりでさみしがってるんじゃないかと心配して、わざわざ来てやったんだぞ」
舌舐めずりしながら、男はあたしを壁に追いつめる。
背中に固い壁が当たった時、恐怖は限界まできた。
「いやぁっ!!」
そばにあったものを手当たりしだい投げつけて、
あたしは必死で抵抗した。
あの頃と、同じように。