きみとベッドで【完結】

幹生を好きになれたら、


それは悪くないことだと思う。



中学生のころ、名取の家から逃げてボロボロになっていたあたしを


幹生が見つけて拾ってくれた時。



どうして惚れなかったのか。



あとから考えてなんとなくわかった気がした。


幹生のいちばんには、なれないからだ。



不特定多数の女がいるからじゃなくて。



音楽と


行方不明の義兄。



幹生の最優先事項はいつだってこの2つ。


いずれ義兄が見つかったとしても、


幹生のいちばんは音楽になるだけ。



女じゃ幹生のいちばんにはなれない。



だからあたしは幹生を好きにはならなかった。


あたしは昔から、


誰かのいちばんになりたかったんだ。



でも、それはとても難しいことで。


いつしかあたしはそれをあきらめた。

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