きみとベッドで【完結】
ゆっくりと、彼女の猫を思わせる瞳が俺を見る。
見てほしくて呼んだようなものだ。
だがそれは、感情の消えたような目だった。
「前に出て、この計算式を解きなさい」
「……はい」
立ち上がり、優雅に歩きシキは俺の横に来る。
きみが傍にいる。
右半身が熱い。
そっと横顔を盗み見る。
長いまつげ、うすく開かれた赤みの強い唇。
細い首筋、さらりと揺れる黒髪。
いっときは、すべて俺のものだった。
いまは誰のものなのだろうか。
朝見た、長身の男子生徒と話すシキ。
ずいぶんと心を許しているようだった。
シキは男に鍵らしきものを渡し、
男は慣れたようにシキにキスをした。
相手の男はどうやら、有名な遊び人の茅島という生徒らしいことが噂でわかった。
シキは遊ばれているのか
それとも遊んでいる方か。