きみとベッドで【完結】
充分完璧だと思っていたけれど、
浅倉は実力や才能のの半分も見せていなかったわけだ。
完璧すぎる人間は、否応なしに人を惹きつけるけれど。
時にそれが孤立の原因になったりもする。
学校というせまく小さな社会の中なら余計に、
あふれる才能は群れの中から浮いてしまうだろう。
従姉妹が隠しておきたかったことをあばくだけあばいて、
シキはうすく笑って「じゃあね」と歩き出す。
「えっ。名取さん、行っちゃうの?」
「うちに入ってくれるんでしょう?」
「まさか。あたしはもう、クラシックはやめたの」
「えー、なんでっ?」
ドアノブに手をかけて、
シキは軽く肩をすくめて見せた。
「クラシックって。どうしても好きになれないから」
さらりとそんなことを言う彼女に、
メンバーたちはそろって口を閉じた。
出ていく時、最後にさみしげに一瞬俺を見て、
シキは廊下へと消えた。