きみとベッドで【完結】

◇心恋‥‥side SIKI

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幹生は本当に、楽しそうにドラムを叩く。


時々あたしは、それがうらやましくなる。



小さなステージでスティックをくるくると器用に使う男を見ながら、


あたしはグラスにため息をそそいだ。




「シキ。オーナーが一曲どうかって」



演奏を終えた幹生が、あたしの横に腰かけて言う。


そしてさっきまであたしに声をかけてきていた中年の男を、


視線だけで追い払った。



「ムリ。サックス持ってきてないし」


「ピアノもできるでしょう」


「ピアノはやらないって知ってるくせに」


「客からリクエストが出てるみたいだよ。おまえが久しぶりにここに顔出したから」


「まだ顔を覚えられていたわけ?」


「おまえは簡単に忘れられるような女じゃないよ」



楽しそうにくすりと笑って、幹生はあたしの頬をぷにぷにとつつく。

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