きみとベッドで【完結】

◆徒花‥‥side ANDO

_____

_______






6月のはじめ頃、猫を拾った。


宿代のかわりに体をさし出す、淫靡な猫だ。



肩につくかつかないかの、つややかな黒髪、


男を誘う、ぬれた黒い瞳。


夜でも目立つ白い肌と、赤い唇。


細く長いしなやかな手足。



きみは本当に猫のようで、人ではない気さえした。


その黒猫の名前はシキ。


たぶん、あだ名かなにかなのだろう。


本名を聞いても、きみはシキ以外の名前は忘れたと、笑ってはぐらかした。



見た目は少女のようなのに、きみの笑顔はずいぶんと大人びていて、


俺より年上に思えることすらあった。


きみは24だと言っていたが、本当のところはどうなのか。


もっと上かもしれないし、下かもしれない。



しかししつこく聞いたら逃げていってしまいそうで、俺は深く問うことはできなかった。

< 30 / 339 >

この作品をシェア

pagetop