きみとベッドで【完結】
「俺はいいよ。クラシックなんてさっぱりだしな。ジャズの方がまだマシなくらいだ」
「もう。顧問なんだからちょっとは勉強してくださいね」
「名前だけの顧問なんだ。俺のことは気にするな。空気くらいに思っておけばいい」
俺の答えに、浅倉は苦笑する。
「こんなにカッコイイ空気、吸いにくいですよ」
小さく言って、浅倉はすぐ横のピアノの鍵盤に指を置いた。
ポーンと長く、音が静かな部屋に響く。
俺は浅倉から目をそらし、手元のパソコンに落とした。
この愛好会ができてから、こういうことが何度かあった。
浅倉はさりげなく、俺に好意を見せてくる。
勘違い、思いすごし、自意識過剰。
そんなことを考えたのは最初だけだ。