きみとベッドで【完結】
体を重ねたあと、先生に包まれて眠る時間が好き。
守られているような錯覚を起こす。
「いつからサックスをやってるんだ?」
まどろんでいたら、低い声が耳に流しこまれた。
「ん……そんな、長くないよ。3年くらい、かな。その前はピアノとか、ヴァイオリンとかやってた」
「へぇ……。イイトコのお嬢様だったのか」
「ふ……まさか。その逆だよ」
「逆? 貧乏だったのか?」
「どうだろう。それ以下だったかもね」
「なんだそれ。……もう、ピアノはやってないのか?」
ああ、せっかくいい気分だったのに。
心と一緒に体が冷えていく。
「やめたの。きっともう弾けない」
弾きたくない。
たぶん一生弾かないよ、ピアノなんて。