きみとベッドで【完結】
「どうしてやめたんだ?」
「やってもやっても、虚しくなるだけだったから。……逃げたんだよ」
先生はあたしの顔をのぞきこんで、不思議そうに首をかしげた。
「サックスが逃げなのか?」
「そう。カッコ悪い?」
あたしの髪をなでながら、先生は天井を見上げる。
「さぁな。でも……サックスを吹くおまえは、きっとカッコイイだろうなとは思うよ」
驚いて、先生の整った横顔を凝視した。
「なに……言ってるの」
「なんだよ? 変なこと言ったか?」
不意打ちだ。
熱いなにかがこみ上げてきて、鼻の奥がつんと痛くなる。
あわてて目を閉じて、ぎゅっと溢れかけた感情を押しとどめた。