きみとベッドで【完結】
幹生はちらりと客席を振り返って、すぐ顔を戻す。
銀縁の眼鏡をしっかりとかけ直し、黒いハンチングを目深にかぶる。
「安藤だよ。おまえいま、安藤と寝てるの?」
「ああ……。そういえば、あんたも同じ学校だっけ」
「まさか忘れてた? 困った奴だなぁ。バレたらどうしてくれるのよ」
「そのカッコしてればバレないよ。ってゆーかアンドレってなに?」
「あだ名。イイ男だから、誰かがからかってそう呼び出したの」
「どこからどう見ても日本人なのに?」
笑いながら、あたしは幹生に「大丈夫」と言って、
先生の席へと向かった。
甘い声の男のため息には、聞こえないフリをした。