きみとベッドで【完結】
あたしはここの正式な奏者じゃない。
でも、あたし目当ての客も多いのは事実。
目当てといっても演奏より、
カラダ。
あたしは時々、ここで男を見つけていたから。
今日も以前、体の関係を持った男が離れた席にいる。
こっちをじっと、見ている。
先生もそれに、気づいたみたい。
冷たそうな切れ長の目に、嫉妬の色が浮かぶ。
もっともっと、堕ちてきて。
「……先生。どこ見てるの?」
「ん? いや……」
「あたしが目の前にいるのによそ見? 先生って意外と浮気性なんだ」
「そんなわけないだろ。おまえが一番イイ女なのに」
まじめな顔で先生が言うから、笑った。
少しおおげさなくらい、笑っておいた。
笑わないと、いけないと思ったから。