きみとベッドで【完結】
ピアノのソロ演奏が始まってすぐ、
オーナーがあたしにウーロン茶を持ってきてくれた。
「シキちゃん。その人が彼氏かい」
あたしはグラスを受け取って、苦笑する。
ちがうって言ったのに。
オーナーは幹生を信用してる。
あんな嘘つきな男なのに。
「そう。イイ男でしょ?」
「ああ、お似合いだね。どうぞごゆっくり」
オーナーは愛想のいい笑みを先生に見せて、離れていった。
先生を間近で見たかっただけか。
「……ねぇ、先生。この後もう1曲やることになってるの。それが終わったらあたし、上がりだから」
「じゃあおまえがステージから降りたら、外に出て待ってるよ」
それにうなずいて、あたしはスタッフルームへと戻った。
笑えるくらい
恋人みたいだと思った。