きみとベッドで【完結】
演奏を終えて、唇を離す。
軽く頭を下げると、波のようにゆっくりと、
拍手があたしに届いてきた。
かけられる声には愛想笑いで応えて、
あたしはスタッフルームに戻った。
「お疲れさま、シキ」
「うん。幹生はまだ出番あるんでしょ? あたし帰るから。これよろしく」
簡単に手入れしたサックスを、幹生に渡す。
あたしのサックスやリード類を保管してくれているのは幹生だ。
あたしは持ち帰らない。
持ち帰ったって吹く場所はないし、
練習したいと思うほど熱心でもない。
あのレンタルロッカーに放っておかれるに決まっている。
そんな楽器たちに同情したのか、いつの間にか幹生が持ち帰り、
必要な時は持ってくるようになった。