君が好き
 美雨は碧の座っているベンチに手紙を置くと、いつも座る、碧とは背中合わせのベンチに腰掛けた。
「夜になると悲しい気持ちになるの。 ……きっと眠るのが怖いのね」
美雨は月を見上げた。
「……神様なんていないんだ。この世界には哀しみが尽きないから」
一呼吸置くと、美雨は大きく息を吸い込んだ。


舞い散る落ち葉を一枚掴んで
僕もきれいに朽ち果てたいといった君は
自ら 息を引き取った

今にも目を覚ましそうな 美しい顔
君は幸せそうに笑っていたね

残された私はどんな顔をすれば良い?

生きているのが つらいって
死のうだなんて思わないで

明日は良いことがあるかもしれない

二人でいれば
幸せは無限大だった


生きている意味が わからないって
答えを焦って探さないで

意味なんてないさ Life

君が生きている

ただ私は それが嬉しい

それだけではだめだったのかな


 美雨はさらに歌を続けた。
碧は涙を溢しながら、美雨の歌に耳を傾けた。
 素直に母親が生きて、過ごしていることを喜べた。母親もそのように思ってくれていると思ったら気持ちが安らいだ。一方で自殺しようとしたことを深く嘆いた。
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