君が好き
菅は碧に歩み寄ると、その頭を優しく撫でた。
碧は人の温もりを感じた。
美雨に抱きしめられたときのことを思い出した。碧は切ない眼差しで床に目を落とした。
「さあ、家に帰って部屋の準備をしないとな。退院の日に迎えに来るよ」
「お願いします」
碧は深々と頭を下げた。
管が帰ると、碧はベッドで横になった。
碧は美雨との思い出を断ち切ろうと目を閉じ、首を何度も横に振った。しかし、目蓋の裏では美雨の姿ばかりが輝きを放って現れた。
退院の朝、早くに目を覚ました碧は、お世話になったものすべてに別れを告げに向かった。
病院内で挨拶を終えると、碧は外へと出かけた。そして、いつものベンチに座ると碧は木を見上げた。
「いつも涼しい日陰をありがとう」
碧は木に声を掛けると、さえずりを上げるスズメとしばらくの間話をした。
「……なんで告白なんてしたんだろう? 後悔しているわけではないんだ。ただ、人を好きになるなんて、懲りたはずなのに……」
碧は空を仰ぐと、擦れあう葉音に耳を傾けた。
「伝えずにはいられなかったんだ。だって、伝わらない想いは無いのと同じ。そうでしょ?」
碧の言葉に耳を傾けるかのように一切の音が止んだ。
「……ねぇ、彼女が来たら、もう一度伝えてくれないかな? 君が好きだって」
碧はゆっくりと立ち上がると、しっかりとした足取りで歩き始めた。
碧の後方から足音がした。
「あなたが手紙を読んで泣いていたときも、自殺の話をしたときも、いつもいつも、 ……ああ、素直な人なんだなって思ったの」
次第に近づいてくる聞きなれた声に碧は振り向くことができなかった。
「私もあなたが好きよ」
その言葉を聞いた瞬間、碧の瞳から涙が溢れた。
碧は人の温もりを感じた。
美雨に抱きしめられたときのことを思い出した。碧は切ない眼差しで床に目を落とした。
「さあ、家に帰って部屋の準備をしないとな。退院の日に迎えに来るよ」
「お願いします」
碧は深々と頭を下げた。
管が帰ると、碧はベッドで横になった。
碧は美雨との思い出を断ち切ろうと目を閉じ、首を何度も横に振った。しかし、目蓋の裏では美雨の姿ばかりが輝きを放って現れた。
退院の朝、早くに目を覚ました碧は、お世話になったものすべてに別れを告げに向かった。
病院内で挨拶を終えると、碧は外へと出かけた。そして、いつものベンチに座ると碧は木を見上げた。
「いつも涼しい日陰をありがとう」
碧は木に声を掛けると、さえずりを上げるスズメとしばらくの間話をした。
「……なんで告白なんてしたんだろう? 後悔しているわけではないんだ。ただ、人を好きになるなんて、懲りたはずなのに……」
碧は空を仰ぐと、擦れあう葉音に耳を傾けた。
「伝えずにはいられなかったんだ。だって、伝わらない想いは無いのと同じ。そうでしょ?」
碧の言葉に耳を傾けるかのように一切の音が止んだ。
「……ねぇ、彼女が来たら、もう一度伝えてくれないかな? 君が好きだって」
碧はゆっくりと立ち上がると、しっかりとした足取りで歩き始めた。
碧の後方から足音がした。
「あなたが手紙を読んで泣いていたときも、自殺の話をしたときも、いつもいつも、 ……ああ、素直な人なんだなって思ったの」
次第に近づいてくる聞きなれた声に碧は振り向くことができなかった。
「私もあなたが好きよ」
その言葉を聞いた瞬間、碧の瞳から涙が溢れた。