君が好き
 美雨は自然が豊かな場所での暮らしを希望した。
 碧は管に事情を説明すると、田舎にアパートを借りた。
 引越しをする前日、碧は美雨から、もう長く生きられないことを告げられた。
「あとどのくらい?」
「一年程度って言われた」
「……そう」
美雨の目に迷いはなかった。その目を見て碧は心を強く持とうと決めた。
「一秒でも長く……」
「うん」
美雨はくしゃくしゃな笑顔で答えた。
 二人は病院で少し多めの薬をもらった。
「いいのかい?」
主治医の言葉に美雨は深くうなずいた。
「そうか」
主治医は娘を見送るような気持ちで送り出した。
「長い間、ありがとうございました」
美雨が深々と頭を下げると、看護婦の何人かは思わず泣き出した。
 空は青々とし、鳥が見送るように優しく鳴いた。
 美雨は鼻歌で返事をすると、深く呼吸をした。
「じゃあ、行こうか」
「うん」
二人は穏やかに微笑み合うと、手をつないで歩いていった。
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