君が好き
店を締めるとすぐに、碧は美雨を風呂に入れた。
美雨は少し明るめの歌を歌った。
「何かあった?」
碧は美雨の背中を流しながら尋ねた。
美雨は目を閉じると、一つ笑った。
「昔見た夢を思い出したの」
美雨はゆっくり目を開け、天井を見上げた。
「秋の夕暮れ、音を奏でるススキ、オレンジ色に輝く川、それでね……」
美雨の言葉を聞いた瞬間、碧には以前見た夢の風景が広がっていた。
「女の子が赤とんぼを追いかけるの」
碧の頬を涙が伝った。
(同じ夢を見ていたんだね)
背中を流す手が止まった。
美雨は碧のほうへ顔を向けた。
「君に残せるものを探したんだ。ずっと君の傍には居られないけれど、一生分の幸せを君にあげたい。一生繋がっていられる絆を結びたい。そうすれば、私も穏やかに眠られる」
美雨の声は柔らかく響いた。
碧の潤んだ瞳に映る美雨の姿は涙で輝いた。
「家族を作ろう」
その言葉に碧はいっそう泣いた。
「でも……」
「大丈夫よ」
美雨は倒れるように碧に抱きついた。その体は湯気立っているのに冷たかった。
碧は儚く、愛するものを強く抱きしめ返した。
二人は風呂を上がると、寄り添いあった。
「僕は君に何もしてあげられないね」
声の調子を落とす碧に、美雨は何度も首を横に振った。
「もう、十分の幸せをもらったよ。 ……私、恋をしてよかった。人を愛せてよかった」
二人は手を繋ぎ合うと、頬を寄せた。
「名前は華蓮にしよう」
碧の言葉に美雨はフフフと笑った。
「男の子でも?」
美雨が言うと、碧はハッとした。
「きっと女の子だから……」
「そうね」
二人は布団を頭までかぶると声を上げて笑った。
美雨は少し明るめの歌を歌った。
「何かあった?」
碧は美雨の背中を流しながら尋ねた。
美雨は目を閉じると、一つ笑った。
「昔見た夢を思い出したの」
美雨はゆっくり目を開け、天井を見上げた。
「秋の夕暮れ、音を奏でるススキ、オレンジ色に輝く川、それでね……」
美雨の言葉を聞いた瞬間、碧には以前見た夢の風景が広がっていた。
「女の子が赤とんぼを追いかけるの」
碧の頬を涙が伝った。
(同じ夢を見ていたんだね)
背中を流す手が止まった。
美雨は碧のほうへ顔を向けた。
「君に残せるものを探したんだ。ずっと君の傍には居られないけれど、一生分の幸せを君にあげたい。一生繋がっていられる絆を結びたい。そうすれば、私も穏やかに眠られる」
美雨の声は柔らかく響いた。
碧の潤んだ瞳に映る美雨の姿は涙で輝いた。
「家族を作ろう」
その言葉に碧はいっそう泣いた。
「でも……」
「大丈夫よ」
美雨は倒れるように碧に抱きついた。その体は湯気立っているのに冷たかった。
碧は儚く、愛するものを強く抱きしめ返した。
二人は風呂を上がると、寄り添いあった。
「僕は君に何もしてあげられないね」
声の調子を落とす碧に、美雨は何度も首を横に振った。
「もう、十分の幸せをもらったよ。 ……私、恋をしてよかった。人を愛せてよかった」
二人は手を繋ぎ合うと、頬を寄せた。
「名前は華蓮にしよう」
碧の言葉に美雨はフフフと笑った。
「男の子でも?」
美雨が言うと、碧はハッとした。
「きっと女の子だから……」
「そうね」
二人は布団を頭までかぶると声を上げて笑った。