危険な誘惑にくちづけを
「スィン・アル・アサドちゃん、って言うの。
 このコのお婆様が、日系人で、日本語は難しくない言い方だったら判るわ」

 これからスィンちゃん、って呼んであげてね?

 そんな風に、紹介されて見てみれば。

 わたしよりも、一つか、二つぐらい年下な感じで。

 黒い髪は、短く刈り込まれ。

 浅黒い肌に、なんだか鋭い真黒な瞳が印象的だった。

 薫ちゃんに呼ばれてやって来る、しなやかな動きは。

 ちょっと痩せすぎの黒猫みたいだ。

 着ているものも、味も素っ気もないTシャツにGパンで。

 どう見ても、男のコ決定のその姿に、佐倉君が眉を寄せた。

「何があったのか知らないけど。
 大事な春陽ちゃんを、こんな男と二人きりになんて、させておけないな」

 だから、こいつが春陽ちゃんと一緒にいるのなら。

 佐倉君は、オイラも残るって言いだした。

 それを聞いて、今度は、薫ちゃんが眉を寄せる。

「……このコのコトを、どんなふうに。
 春陽ちゃんに説明しようか、本当はずっと悩んでたんだけど、ね。
 ……この時点で誤解……って言うか。
 スィンちゃんについて。事実と違うコトが二つ、あるわね」
 
 ……え?

 それはどういうコト?
 


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